2012年5月22日火曜日

投手の育成(#2)

最近「ドジャースの戦法(1957年7月20日初刊):内村祐之氏訳」を再読しています。この本は、日本の近代野球の根幹を築き上げた本と言っても過言ではないと思います。読売巨人軍の野球もこの本がベースとなっています。今の指導書の中に、これだけしっかりした指導書は見当りません。技術書でもあり、指導者の心得が書かれた素晴らしい本だと思います。この本の中で投手についての数多くの基本事項が書かれていますが、特に印象にある記述(コントロールの悪い理由の項の中の一部)を原文のまま次に掲載します。

'最後に、「勇気」について述べたい。勇気とは相対的なものである。マウンド上でおどおどしている若者は、たぶんしばらく野球から遠ざかっていたのだろう。それでグランドになじめないのだろう。こういう際には、肉体と精神とを周囲の環境に合わせるようにしなければならないのだが、コーチや教師のあるものは、これを恐怖や臆病のためと思いこむのである。この投手板になじめないということも、コントロールを悪くする原因となる。しかしこれとても、彼にもう少し機会を与えるならば、改善されることなのである。
私は、シーズン中にたくさんのゲームを見るが、ゲームの前半、見るからに体力にあふれている投手が、これから大いにやりだそうとする矢先、コーチに交代を命ぜられるのを見るとがっかりする。
コーチや監督のこうした性急さが、投手の自信を失わせることもあるのである。
また監督やコーチが、向こう見ずと勇気とを取り違えることもある。強打者相手に速球一点ばりでいく投手を評して、「腹のすわったやつだ」といい、強打者に対して慎重な投手を「臆病だ」と批評する。しかし、ほんとうに臆病な選手などはあまりいないもである。また、生来、人なみはずれて攻撃的な若者もいることだろう。コーチの方にお願いする。内気そうに見える投手に別な機会を与えてほしい。彼はおそらく予想外の勇気を示すかもしれないのだ。'

原文を忠実に訳されていると思われ、少し理解しづらいかもしれませんが、なんとなくニュアンスはわかりますよね。
昔のドジャースの方が書かれた本ですが、投手がころころと変わる今の大リーグのシステムからは想像もつかないような内容です。
「勇気の考え方」「若い選手の機会の大事さ」という指導者の心構えが書かれています。
やはり、育成は、機会の創出なんですよね。


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