1ヶ月ぶりにブログを更新いたします。
アップしていないにも拘らず、沢山の方にご訪問頂き、大変恐縮しているとともに感謝致します。
さて、私事ですが、今年10月に中国天津で開催されます第6回東アジア競技大会の野球競技の代表監督を務めさせて頂くことになりました。
2010のアジア大会で初めて代表チームの指揮をとらせて戴いた後、パナマで行なわれたワールドカップ大会、昨年台湾で開催されたBFAアジア選手権を含め今回で4大会目の国際大会ということになります。2004年から代表チームコーチとして世界大会に参加したのが始まりですから代表チームに携わって今年で10年ということになり、世界マッチの苦しさと楽しさに完全に麻痺している状態です。
最近、facebookなるもので野球関連の色々な方とお友達になり、色々なご意見を拝見する機会を得ていますが、真面目に、真剣に今後の野球界を考えている方が沢山いらっしゃると驚きを覚えております。
皆様方からの連盟や協会に対する想いをちゃんと受け止めるシステムが必要だなと連盟に属する者として考える次第です。
前置きはこのあたりにして、今回は野球界の基本という言葉に焦点をあてて話をしたいと思います。
これだけ野球人口が多い中、公式に指導マニュアルがないというのは何故なのかと単純に考えてしまいます。
これは何故なのか?
ある意味、競技人口が多すぎて、成功したパターン(事例)も数多くあり、どれが正しい理論かという整理ができていないということではないでしょうか。
例えば、指導者の意見を取り纏めるにあたり、一番難しい打撃の指導理論。ある人は、バットはダウンスウィング、ある人はレベルスウィング、また後ろ足が大切、前足に体重を移動した方がいいなど指導する人によって理論を其々にもっておられます。
自分の競技経験と指導を重ねていく上で作り上げられた理論が「基本」となっていると言っても過言ではないでしょう。
私は、指導者向けの講習会などに立場的に良く参加する機会があるのですが、その際に良く指導者に「あなたの考えている基本を話してみてください」と質問をします。その研修会の狭い中でも指導者ごとに其々の意見がぶつかることが多くあります。
「基本」とは、物事が成り立つ根本という意です。
したがって、指導をする人間が基本と呼ばれるものについては同じことを喋れるようになっていなければならないと思います。
さて、では野球界で基本はあるのか?
「ボールを受けるときは、胸の前で、両手で捕球する」など感覚的に基本は存在しているのですが、皆がしっかり理解できるような基本というものは浸透していない、極端に言い換えれば存在しないと考えた方が良いと思っています。
なぜそのようなことに陥っているかというと野球界は、真の意でスポーツ医科学の分野を取り入れることが他のスポーツ競技に比べて遅れているからだと思っています。
前回ブログで取り上げました投球の問題にも記載しましたが、「投げすぎ」という言葉にあるように一体何球投球をすれば「投げすぎ」なのかという類の定義(ガイドライン)が未だ明確になっていません。
アメリカでは100球を一つの目安にしていますが、これは医科学的というよりも契約の世界ですから「投げすぎ」の目安にはならないでしょう。
人それぞれ、更にジュニア期と青年期など年齢によって、投球継続の可否判断は変わってしかるべきというのは理解していますが、少なくとも大よその基準を決めることは非常に大事だと思います。
私の運営しているシニアチームの選手が肘痛で休み、スポーツ整形外科に診察を仰ぎ、「野球肘と言われ、投球再開をして良いというまで投げないように」と言われましたと報告をしてきます。
確かに本人が痛いのだから診察としては適切で、処置についても無難な対応ですが、完治したとしてもまた同じ症状を繰り返す可能性が高いということも忘れてはいけません。
「なぜ肘痛が起きたのか」という原因究明をせずして、完治はないということを指導者側が知っておくことが非常に重要となってきます。
話が脱線してしまいましたが、医科学的な見地から今実際現場で行なわれている指導についてしっかり分析を行うことを手はじめとして「基本」と呼ばれるものを確立し、これをマニュアル化していくことが今の野球界にもっとも必要なことであると考えます。
日本野球連盟では、遅まきながら、「投球」「打撃」「守備・走塁」「トレーニング」4つの研究会を競技力向上委員会の委員を中心に立ち上げる計画としております。
最終的にマニュアルづくりまで行ければいいですが、先ずは議論を交わす場をつくることが重要であると考えております。
医科学の導入が遅れていると誤って捉えられたかもしれませんが、医科学的な見地が入り込みにくい現場環境に現況はあるというのが正しい表現かと思います。
医科学に携わっている方々には、どんどんご意見を現場指導にぶつけて欲しいと思います。そうすることで現場指導者の指導の裏づけとなり、指導の質の向上にも繋がります。
現場指導者も医科学と聞けば、全てが正しいという理解をしがちですが、指導に使えるかどうかの吟味をちゃんと行なう過程を踏んで欲しいと思います。
アメリカの科学者が「科学とは万民の理解を得られなければならない」と話をしているのを聞きました。裏を返せば、突き詰めていく過程では、科学にも嘘があるということを知っていなければならないということが指導者にとって必要なことと思います。
最後に私がキャッチボールを指導するときは、受け手がかざしているグラブを狙えと指導をしています。なぜなら一番捕球し易いところに自然と人間は構えているからです。
次回も頑張ります。