2012年5月23日水曜日

投手の育成(#4)

練習から連想するのは、グランドの上でやる厳しい練習ですが、実際に技術的な気づきの瞬間は、意外と自分で練習しているときの方が多いと思います。私は、打者でしたが、「こうやって打つんだ」とひらめいた瞬間は、試合前のペッパーをやっている時でした。当然ながら、日頃から一生懸命考えて取組んでいたからこそ、この瞬間を迎えたと思ってはいます。
さて、投手の練習は、ブルペンでの投球練習と勘違いしている投手が沢山います。確かに、マウンドの傾斜で投げる練習は、必要ですが、高々100球程度(100球の内訳もストレートが60%-70%で、変化球がその他)ボールを投げたからといって体得するまでには至らないと思います。体得するとは、「コツを掴む」ということであり、反復の回数に比例するものです。
では、どのような練習がお勧めか、以下に記載します。
��.コントロールを良くするためには、フリーバッティングで投げることが一番かと思います。若い選手は、ブルペンでは良くても打者が立つと変わってしまう選手が多く居ます。これは、打者が立ったときの感覚の欠如と対打者との練習が少ないからと考えます。したがって、その機会を沢山つくることが重要で、一番もってこいの練習がフリーバッティングへの登板だからです。7割ぐらいの力でストライクを必ず投げることを目的として・・・。投げながら、試合における打者が入った感覚は、自然と覚えてくるので、コントロールに対する不安は、少なからず軽減されます。また、フリーバッティングで打者に投球することで、どのようにやれば打者がタイミングが外れるのかを実戦的に体感もできます。フリーバッティングからブルペン投球へのセット練習をお勧めします。
��.次にキャッチボール後の10m程度での遊び感覚での二人組みでの変化球の投げあいです(片方は捕手役)。色々な握り方で変化球を投げて見て、変化の度合いをみます。ボールの握りは、個人の指の長さとか手首の硬さなど個人差があり、教科書に載っているような握り方が適当でない場合もあります。この練習で試してみた握り方をブルペンでの投球練習に入れて見ると投球練習に目的が出来て、楽しみが出て、集中力も増します。
��.フォームを固めるためには、同じフォームで何度もできるようにまさにからだで覚える必要がありますから、投げるしかありません。
そのためには、10m-15m程度離れたネットにターゲットをつくって、何度も同じ動作を繰り返し行なうことが一番の方法と思います。
この練習は、根気が入りますが、「ああでもない」「こうでもない」と自分で一番考えながら課題を解決していく一番の練習です。
この練習を真面目にやれているかを私は、監督の立場でよく見ています(勿論、声はかけません)。
投手は、マウンドでは、一人です。1球1球自分で修正、修復して行かなければならないポジションです。一人で練習する時にどのような態度、姿勢で取組むかが、マウンドでの結果に現れます。そのような意味では、指導者がいる時は、しっかりやるが、影ではサボっているという選手は、エースにはなれません。逆に、一人でしっかり練習ができる選手が結果的には、頼りになる選手ということになります。
投手は、ブルペンで投げて、走って終わりの風潮がありますが、試合の90%でウエイトを占める投手の練習は、野手と比較して比べものにならいぐらい本来は、辛い練習でなければならないと思っています。
無謀な練習は、不要ですが、唯一個人種目である投手の練習については、しっかりと指導者は見てあげる必要があります。


2012年5月22日火曜日

投手の育成(#3)

投手の資質って、そもそもなんだろうって考え始めると、
��.スピードボールを投げれること
��.変化球を投げれること
��.コントロール良くなげれること
��.体力(強さ、柔らかさ)を保有すること
��.タフな精神力を持っていること
などが挙げられるかと思います。
少年野球などで、投手を選択する場合に着目した方が良いのは、4の体力で、特に肩関節の柔らかさとからだのバランスを見分けると良いでしょう。
体のバランスとは、自分の体を上手く使いこなしている選手、例えば反復横とびなどをやらせると一目瞭然なんですが、横に動く動作から直ぐに切り返して逆方向に動く瞬間のからだの使い方などを見るとわかります。からだがふられないという言葉がぴったりかと思いますが・・・。
一方、肩関節の柔らかさとは、ボールを投げている動作で直ぐにわかりますから、これは説明することも要らないでしょう。
なぜ、体力面を重視するかというと、投手の絶対条件は、スピードが速いことではないからです。
投手の本来の目的は、相手に点をやらないこと、仮に点を取られても、味方の得点を超えられないこと、つまり勝つことが目的であるからです。ということは、相手打者を打ち取ることが大切であり、打ち取る方法を持っているかということがポイントとなります。打者が一番に嫌う投手のタイプは、タイミングが合わない投手です。
どうやったら、打者のタイミングを外すことができるかが鍵となります。
タイミングを外すために、早いボールがあったり、変化球があったりするわけですが、そもそも投球フォーム自体がタイミングが取り辛い投手を見つけ、育てる方が勝てる要素が高くなります。
ソフトバンクからジャイアンツに移籍した杉内投手は、この代表的な選手であると思っています。
彼の特徴は、腕の振りは、打者からは、130KM程度のボールが来るように身受けられ、ホームプレートで140KM近いボールが来るという、他の投手にない幻惑した投球フォームを持ち合わせています。打者からすると軽く投げられていると勘違いし、予想を超える球威があるのですから手が出なくなることはお分かりいただけるでしょう。
これができるのも、杉内選手の肩関節の柔らかさと強靭な足腰があるからです。肩関節の柔らかさがリリースのタイミングを遅らせ、打者のタイミングをすこしづづ狂わせることができる武器となっています。
また、彼は、力んでスピードボールを投げると150KM近い球を投げることはできますが、150KMの速球を投げようとして、150KMの速球を投げると打者が予想できていつか打たれてしまうことを知っています。
肩関節の柔らかい選手は、宝です。指導者の眼力でこのような選手を是非、投手に起用してみて下さい。
体力がつけば、必ずスピードは上がります。場数を踏めば、メンタルは強くなります。選手の資質を見抜いて、良い投手を育てて下さい。
初めてキャッチボールをやってって怖いと思った選手が杉内投手でした。


投手の育成(#2)

最近「ドジャースの戦法(1957年7月20日初刊):内村祐之氏訳」を再読しています。この本は、日本の近代野球の根幹を築き上げた本と言っても過言ではないと思います。読売巨人軍の野球もこの本がベースとなっています。今の指導書の中に、これだけしっかりした指導書は見当りません。技術書でもあり、指導者の心得が書かれた素晴らしい本だと思います。この本の中で投手についての数多くの基本事項が書かれていますが、特に印象にある記述(コントロールの悪い理由の項の中の一部)を原文のまま次に掲載します。

'最後に、「勇気」について述べたい。勇気とは相対的なものである。マウンド上でおどおどしている若者は、たぶんしばらく野球から遠ざかっていたのだろう。それでグランドになじめないのだろう。こういう際には、肉体と精神とを周囲の環境に合わせるようにしなければならないのだが、コーチや教師のあるものは、これを恐怖や臆病のためと思いこむのである。この投手板になじめないということも、コントロールを悪くする原因となる。しかしこれとても、彼にもう少し機会を与えるならば、改善されることなのである。
私は、シーズン中にたくさんのゲームを見るが、ゲームの前半、見るからに体力にあふれている投手が、これから大いにやりだそうとする矢先、コーチに交代を命ぜられるのを見るとがっかりする。
コーチや監督のこうした性急さが、投手の自信を失わせることもあるのである。
また監督やコーチが、向こう見ずと勇気とを取り違えることもある。強打者相手に速球一点ばりでいく投手を評して、「腹のすわったやつだ」といい、強打者に対して慎重な投手を「臆病だ」と批評する。しかし、ほんとうに臆病な選手などはあまりいないもである。また、生来、人なみはずれて攻撃的な若者もいることだろう。コーチの方にお願いする。内気そうに見える投手に別な機会を与えてほしい。彼はおそらく予想外の勇気を示すかもしれないのだ。'

原文を忠実に訳されていると思われ、少し理解しづらいかもしれませんが、なんとなくニュアンスはわかりますよね。
昔のドジャースの方が書かれた本ですが、投手がころころと変わる今の大リーグのシステムからは想像もつかないような内容です。
「勇気の考え方」「若い選手の機会の大事さ」という指導者の心構えが書かれています。
やはり、育成は、機会の創出なんですよね。


2012年5月20日日曜日

投手の育成(#1)

投手という生き物は、他の野手と違い、扱いがかなり難しいと思います。アマチュア野球では、9割が投手の力によって試合が決まると言われています。
したがって、いい意味でも、悪い意味でも自尊心が強い選手が投手になりたがる傾向にあります。その中でも、特にエース投手になるような選手は、その顕著な例であり、その扱いについては、別格に位置づけて接しないとプライドを傷つけられ、直ぐすねてしまいかねません。高校野球でいう1番と10番、11番の投手とは、まったく違うのだということです。
逆にそれぐらいの気持ちでエースがいてくれないと頼りがいもありません。では、どう扱えばいいのかということですが、別に過保護にしろと言っているわけではありません。過保護にするとどこまでもつけ上がっていくのが、投手であり、チーム内の収拾がつかなくなってしまいます。
特別に扱うというのは、「練習試合でエースが投げるゲームは、負けてはならない」「エースだから10本走るところを15本」とか少し他の選手と君は違うんだよと威厳を持たせてあげることです。
要は、勝ち負けの責任をしっかり自覚させることが重要となります。
たったこれだけのことで、エースは頑張ることができます。
また、エースに自覚が芽生えると野手もエースの頑張りに応えようとして相乗効果でぐんぐん力が付いてきます。
試合の9割は投手と言われていますが、練習を含め、日常からチームのエースの存在はチームづくりの大きなウエイトを占めます。
指導者は、そういった意味で絶えずエースとのコミュニケーションを図り、お前に全幅の信頼をおいているよと伝えてあげることが重要となります。
私も高校までは、内野手と投手を併用していました。大学に入り、投手をやれと言われましたが、走るのが嫌いで野手を選びました。こういった選手は、投手に向いてないんですよね・・・。


2012年5月14日月曜日

打順について(#3)

元中日監督の落合監督は、「左打者の打撃コーチに右打者の指導は、難しい」「1,2番打者を打っていた打撃コーチに4番打者の育成は難しい」ということを話されていると共通の友人を介してお聞きしました。
私も同意見で、レベルが高くなればなるほど、この二つの指摘について傾向が高いと思っています。
日本人の左打者は特に一塁方向に重心を移動しながら打つ打者が多く、軸で回転しながら打つ選手が少ないことは既に先にブログ内でコメントしておりますが、この感覚は、右打者には絶対にあり得えず、右打者からすると全く異質なものです。逆に言えば、左打者に右打者の感覚はわかり辛いと思います。特に逆方向に打つ打ち方については、特に顕著で全くからだの使い方が異なります。
しかし、右打者の打撃コーチは、左の打撃コーチが右打者を理解できないのと違い、左打者の気持ちを少し理解している人が多いと思います。子供の頃から、左打者が右打者に転向する人が少ないのに比べ、右打者が左打者に転向するのは非常に多く、また成功事例が多い。簡単に転向ができるとも捉えられると考えても良いかと思います。
そう意味で案外、誰でも一度は、左打ちへの挑戦を右打者は行なっていることも大きな要因かと思います。
題目からかけ離れてしまいましたが、落合さんコメントの二つ目が今日の本題です。
現役時代、私もあらゆるチームで色々な打順を打ちました。夫々に打順の役目があることを知りましたし、逆に打順によって試合への取組み方が変わってきます。
個人的には、この打順の中でも、4番打者だけは、他のどの打順とも少し違うと強く思っています。4番打者が一番好打者とは限らないとは思いますが、やはりチームの精神的な支柱であり、相手チームから最も警戒されるのも事実です。
上位打者がチャンスを作り、4番打者が1発で試合の流れを変える、または決めるという醍醐味は、この打順しかないからです。
私が4番打者に期待することは、結果よりも、いつも同じ精神状態で相手に立ち向かっていくことです。三振を怖がって当てにいくような打撃をすると相手チームからチームの資質を問われることになり、舐められてしまいます。前打席まで3三振でも、最後の打席で本塁打を打って試合を決めるのが4番の役割です。勿論、全打席安打を打ってもらうに越したことはないのですが・・・。
私は、どちらかというと「こいつが4番」と決めたら、かなり我慢して起用し続けます。これは、4番を努めた人間しかわからない重責があることとチームの顔となる人間は、そうそう居ないと思っているからです。
良くクリーンアップを頻繁に入れ替えるチームがありますが、結局、芯がないので、長い目で見たときでは強いチームが出来上がらないと思っています。
野球は、打っても、打てなくても批判を受けるスポーツです。結果に囚われると自分のパフォーマンスが出来なくなってきます。4番打者は、チームの顔と思い、批判を一心に受ける覚悟で試合に臨み、どんな場面でも自分のスゥイングをするという強い信念で打席に立つべきです。
4番を打っている選手には、このような気概を持ってプライドを持って試合に臨んで欲しいものです。
4番打者を降格させるときは、4番に不適切と判断したのだということを指導者は理解し、4番という打順が特別な打順であることを知って欲しいと思います。


2012年5月2日水曜日

打順について

先日、長崎大学在学中に我が長崎文教シニアのコーチとして在籍してくれた、現在、南大隈高校の酒匂監督から質問を受けました。部員が9人しかいないらしく(1年生がいない)打順について悩んでいるが、どうすれば良いかという内容です。
打順は、非常に難しいですね。
一般論では語れますが、やはりチーム事情をしっかり把握していないと軽んじることはできないものです。
最近、特に打順で私が考えていることを記載します。
特に重要視しているのは、2番バッターです。
求める2番バッター像は、できれば左打者ですが(右打者でも構いません)、①長打が打てること②足が速いこと③ボールに当てるのが上手い選手④犠牲の精神があること。
これは3番打者ではないかとご指摘を受けるかもしれませんが、全くそのイメージで、2番に据え置きたい。
通常、1,2番を入れ替えることは、よくありますが、調子に応じて2,3番を入れ替えたいというのが理想です。
��番打者には、犠打を求めるのではなく、安打でチャンスを広げてクリーンアップに繋ぐことを求めたいという想いです。
大半のチームは、3番打者がチームで一番の好打者、4番打者がその次にあり、1番打者は3番打者に続く打者で、尚且つ足が早いこと。
��番打者は、バント及び小技ができ、足が速い選手というのが定番です。
��番打者で1アウトを簡単に謙譲したくないというのが、私の想いであり、大半のケースは打たせることが多い采配をとっていると自己分析しています。
逆に1番打者は、ボールに食らいついていくようなしつこいタイプを置きたいところです。以前は、私も1番打者には、思い切りの良いタイプの選手を起用することが多かったのですが、最近は、この傾向にあります。
��番打者の出塁がカギとなるのは、確かなので1番打者には、出塁率が高い打者、打率がよく、選球眼が良い選手、特に足には拘らないいうイメージでしょうか。
次回は、もう少し打順について、掘り下げて記載をします。
纏まらないものとなりましたが、このイメージで今年のアジア選手権も組み立ててみたいと考えています。